作り終えて

はじめに

1/6オーニソプター(羽ばたき飛行機)の製作記事です。製作開始は2004年4月18日、コックピットのシートから始めました。中止や変更を経て2006年1月12日に製作を再開し、4月29日深夜にとりあえず完成させました。

私が最初にオーニソプターなるものを知ったのは、1985年の春休みに公開された映画「デューン 砂の惑星」でした。高校卒業直後に公開され映画館に見に行きましたが、そこに出てきたオーニソプターは羽ばたきもせず、翼も小さく、特に印象に残るものではありませんでした。

そのすぐ後入学した専門学校の、教室の本棚にあったのが、KKワールドフォトプレスから発行されていた『メカニックマガジン』。その中に、オーニソプターに関する記事があったのです。記事もその姿もメカフェチのツボをつきまくる内容で、その後時折オーニソプターを紙に描いたりするようになりました。

後に古本屋でその時読んだ『メカニックマガジン』を探しているのですが、未だに見つからず。尾翼に相当する箇所が、離陸時の推力を得るためのロケットになっている等の解説イラストが載っていた記事なんですが。

1983年11月号に「サイエンス&テクノスケープ 第7回 鳥のようにはばたいて飛ぶ オーニソプター」という記事があり購入したのですが、私が最初に読んだものとは違うようです。ちなみに記事は永瀬唯さん、イラストは佐藤道明さん、青井邦夫さん。

2004年6月20日、追加及び訂正。永瀬唯様よりご指摘のメールをいただきました。どうもありがとうございました。

尾翼部に離陸時に使うロケット(というか何らかのエンジン、としておきます)を装備しているオーニソプターのイラストですが、少なくとも『メカニックマガジン』に連載されていた「サイエンス&テクノスケープ」とは関係なさそうです。というより別のものと混同しているか、『メカニックマガジン』に載っていたとする私の記憶自体が間違いであった可能性のほうが高いようです。

1992年8月に描いたCGのオーニソプターも、尾翼部にエンジンを装備しているっぽいものを描いてますので、私がその頃から「尾翼部にエンジン」というオーニソプターの形が頭にあったのは事実です。が、その頃からすでになんらかの思い違いをしてたかもしれません。

とにかく、「尾翼部にエンジン」というオーニソプターのイラストが『メカニックマガジン』に掲載されていると断定的に書いたのは、根拠が私の記憶だけでしかないので、非常に不適切なことでした。

この件で混乱した方がおられましたらお詫びいたします。大変失礼いたしました。

――ということで、「尾翼部にエンジン」がついたオーニソプターのイラストをご存じの方、メールをお待ちしております。そういうイラスト、存在しているんだろうか……。なんか心配になってきました……。

オーニソプターとは

ラテン語で「鳥の」を表す「ornitho」と、ギリシャ語で「翼」を意味する「pter」の合成語なんだそうな。オーニソ+プター。「ソプター」と略される場合があるのは語呂の良さからでしょうか?

今の飛行機は前へ進むための推力をプロペラやジェットエンジンによって得ます。浮かぶための揚力は、推力によって向かってくる空気が翼を流れることによって得られます。

オーニソプターは鳥と同じく、推力と揚力を翼の運動によって得ます。鳥の場合、胴体側の翼の羽が揚力の発生を受け持ち、翼の先にある風切羽(初列風切羽)が推力と揚力を得ます。……こんな感じでいいんでしょうか。

現代のはばたき機は、ゴム動力の小型のものや、それよりも大きいラジコン機として飛んでいるものが殆どのようです。

人を載せて飛ぶような大きなものは、1929年のカタパルトによって離陸し270mを飛んだリピッシュの例があるくらいで、1993年から活動している日本のチームによる「迦楼羅(かるら)」等は2004年現在の活動は判りません。動力付きの有人オーニソプターなんてのは未だに無さそう。

設定

設定としては、当時10才のすみれがゴミ捨て場や近所の大学の施設からかっぱらってきた車体や部品を使い、近所に住む同い年のちえりちゃんと一緒に組み立てたということにしてます。この辺は以前作ったバイクと一緒。

本当は自分たちが飛びたいんだけど、誰もこんなもので飛んだ人はいないので、最初は家事手伝いに来ている素子をモルモット代わりに乗せて実験を繰り返し、データがそろって大丈夫と判ったところで自分達用のオーニソプターを作ろうと考えました。

動力はなんでしょうね。燃料は水素。電圧で無段階に収縮弛緩を繰り返す人工筋肉素材を使い、羽ばたきを実現。翼や羽の一枚一枚をリアルタイムで制御するために、量子コンピュータを装備。速度は200km/h出ればいいほう? 離陸速度は数十km/h。エアロスバルで88km/hというからそれよりももっと遅い速度で離陸可能。着陸装置の車輪はエンジンから伸びる流体駆動系の一部をなし、離陸時には自動車のように車輪で加速して離陸速度を得る。

製作方針

胴体はFRPで製作。なるべく軽く且つ強度を得たいため。原型は発泡スチロール+水粘土で、石膏で型取り。水で離型しよう。キャノピーは透明塩ビのヒートプレス。

翼は基部が回転し、さらに蝶番のような関節をつけて上下の羽ばたきができるようにする。回転する基部は塩ビパイプを使用。

翼をどんな角度にしようがきちんと固定できるよう、なるべく軽く、関節は固く作る。そのため羽はスタイロフォーム。羽は一枚一枚をボールジョイントで前縁部につけ、それぞれが可動するようにする。前縁部はどうしよう……。細い金属パイプを骨にして、曲げたプラ板で成形するか?

着陸装置(要は足)は塩ビパイプ。鳥のように着陸時は曲がった状態になっているようにする。そのためにも胴体はできるだけ軽く作りたい。車輪は原型を一個作り、表面は黒の顔料を入れたシリコン、それ以外は真鍮パイプでも中に組み込んだキャストで量産しようかなと考えてはいますが、さてどうなることか。

コックピット内や翼端灯等は光らせたい。

できるのか本当に……。

2004年11月6日追加。製作方針を変更しました。胴体原型はスタイロフォーム+ポリパテで、FRPで型取り。ボンリースとPVAで離型処理してFRPで抜きます。石膏型は重いです。

車輪は全部キャストで複製しました。真鍮パイプ入れるほどのこともないだろーと思いまして……。

参考書籍

手持ちの本もありますが、半分以上は図書館で借りたものだったり。

メカニックマガジン 1983年11月号 サイエンス&テクノスケープ第7回
著者:永瀬唯
発行:kkワールドフォトプレス
定価:700円
発行日:1983年11月1日
ザ・コックピット
発行:イカロス出版株式会社
定価:2381円+税
発行日:2003年1月1日
ISBN4-87149-434-9
航空ファン 1985年6月号 F-16とXシリーズの特集
発行:文林堂
定価:750円
発行日:1985年6月1日
ISBN4-594-60168-5
ビジュアル博物館 鳥類
著者:デビッド・バーニー
ビジュアル博物館 1
発行:同朋舎出版
定価:3500円
発行日:1996年9月20日 第5刷発行
ISBN4-8104-0799-3
ビジュアル博物館 猛禽類
ビジュアル博物館
発行:同朋舎出版

『SFマガジン』2001年8月号を注文し、掲載されている『オーニソプター開発秘史』(ジャン・ラース・ジェンセン作・嶋田洋一訳)も読みました。カナダ人作家による英国人が主人公で主要な舞台が日本という歴史物SF短編です。日本の有力人物の名がオクラ・シューコー・カン(小倉修孝?)だったり、住むことになる土地の名がメボソ(目細?)だったりと妙な固有名詞はありますが、ゆったりと時間が流れる面白い話でした。ラストは内部に動力源を持たず騒音を発生しないオーニソプターが登場します。