作り終えて

はじめに

「月」の製作記事です。地球の唯一の天然衛星、月です。パイオニア・スターシップ・シリーズ世界での話で、2095年に大規模な災害が起き、月面の様子が変わりました。さらには自転時間が若干はやくなったため、数億年ぶりに月の裏側が地球の方を向く時がきてしまうという。

2010年のトレフェス神戸2に参加したときは、ディーラー卓の上を少し賑やかにするために宇宙船用ドックというものを作りました。今回も何か作ろうとしましたが、メカは結構疲れるし時間や資金もアレなので、以前からいつか作ろうと思ってた「月」を作ることにしました。

宇宙船と宇宙、月の合成画像を作る際、フリーの画像で月を用意するのが困難です。裏側ともなるとNASAかロシアの画像を無断で使うしかありません。NASAが公開した画像などの取り扱いは、日本語だとJAXAのサイト内にあるNASAの画像使用およびNASAウェブサイトへのリンクについて(仮訳)が参考になります(末尾の注意事項も熟読)。教育、情報提供を目的とするならともかく、うちみたいに創作物に使うには問題があるでしょう。

自由な角度から見た画像が必要な場合、3Dで作るという手がありますが、フリーのテクスチャがみつかりません。というかあることはあるんですが、怪しいのでパスしたい。

さらには月面崩壊により同心円状の亀裂が入っているんですが、これをいちいち入れるのが面倒です。3Dのテクスチャだと、両極や赤道を中心に同心円を描くなら楽ですが、それ以外を中心にするとマッピングしたとき歪むのではないかなと……。

ということで、自分で月の模型を作るのが手っ取り早いんではないかと思ったのでした。

材料は数ヶ月前に購入していましたが、宇宙船の原型作りを優先したため、月の製作に取りかかったのはトレフェス神戸3開催の1ヶ月前です。

塗装は基本的に水性塗料のみ。マスキングも必要なく、べたべた塗っていけばなんとかなるだろう、いやなんとかしなければ! という感じで始めています。

設定

21世紀の後半、太陽近辺の光と熱を利用した反物質の高効率大量生産技術「プロメテウス法」が考案、実行に移され、一部の国家がkg単位の反物質を保有するに至りました。

反物質はごく一部が地球に送られたほかは、月基地や深宇宙基地(太陽-地球系ラグランジュ点2)で保管、実験に使われました。生産に必要なエネルギーを太陽でまかなったとはいえ、大量のリソースを食いつぶして生産される反物質は、発電などの用途に回せるものではありません。また、反物質の独占や分配についての不満から、紛争の元になることもありました。

2095年7月16日の夜、満月に近い月に突然異変が生じます。月の東端に見えるスミス海付近を中心に大規模な崩壊現象が発生。同心円状の巨大な亀裂が東側と収束場所である西側に出現しました。光速に近い早さで複数の亀裂が出現したあと、地震波が月内部を駆け巡って表層が粉砕、大量のレゴリスや月面の施設、2084名の人間が共に巻き上げられました。「月面崩壊」として知られる事件です。

事態はそれだけにとどまらず、月の自転にも変化を起こしました。自転方向にわずかな加速がついたために自転と公転との同期が破られ、これまで地球からは見ることができなかった月の裏側が一定の周期で地球の方を向くようになったのです。

月面崩壊の数時間前に地球の主要大学にある公開サーバに送られた二つの論文から原因が特定できました。スミス海南端のキースクレーターにあるキース米国月面基地から送られた論文「超光速への到達」「重力制御」の内容から、当基地において反物質を使った実験が行われ、その結果が惨劇をもたらしたことが判明しました。論文がなぜ基地から送信されたのか、誰が送信したのかは判っていません。

当基地にあった反物質の量から推測しても、月面表層を破壊し、自転速度にも影響を与えるだけのエネルギーはでてきません。余分のエネルギーがどこから出てきたのかが謎でしたが、二つの論文を解読することで謎が解けました。半世紀以上ののち、重力波増幅制御技術として実用化することになります。

月面崩壊は様々な影響をもたらしました。多くの人命が失われたことや、メテオロイドの増加で一部の軌道が使えなくなったこと、弱体化が見えていた米国への非難と分裂騒動、新国連発足と中央ヨーロッパの台頭等。

分裂したうちの西アメリカは威厳と誇りをとりもどすため、5年後に超光速飛翔体「エンタープライズ」を打ち上げ、初の超光速航行を行います。飛翔体は破壊された状態で出現したものの、物体はたしかに光速を超えたのでした。

また、月面では昔に衝突し埋もれていた彗星の核や小天体が表層の崩壊により出現し、水や金属資源を得られるようになりました。数年後から無人基地が稼働して推進剤補給基地となり、20年後の2115年には有人基地が再開します。