はじめに

これを書いている頃、大阪湾に米海軍のアメリカ級強襲揚陸艦「アメリカ」がやってきました。昨年(2022年)は同型艦の「トリポリ」が佐世保や岩国、横須賀に入港しています。

今を去ること半世紀ほど前にも、神戸港に「トリポリ」という名の米軍艦がやってきました。先代に当たるイオージマ級の強襲揚陸艦で、当時はヘリ空母と呼ばれていました。

幼稚園児だった私は、家族とともに一般公開に行って船内を見学しています。その時に配布されたパンフレットを公開してみます。

半世紀前の話で資料的価値があるのかないのかわかりませんが、興味をもったとか懐かしく思う方がおられれば、と思います。

一般公開の日程

1972年(昭和47年)3月、米海軍のヘリ空母「トリポリ」 (LPH-10) が来神らいしん、神戸港に停泊して一般公開が行われました。

神戸市のサイトに神戸港の歴史のページがあり、末尾にPDF文書へのリンクがあります。出来事が精細に載っていますが、トリポリのことは記載されていませんでした。

USS Tripoli (LPH-10) Command History Report, 1972を見ると以下の文があります。

3月11日(土)に入港し、12日(日)~17日(金)まで公開、最終日に出港……でしょうか。2万人が訪れたようですね。

USS Tripoli (LPH-10)

クラス名
イオージマ級強襲揚陸艦(ヘリコプター揚陸艦、ヘリ空母)
全長
182m(現行のアメリカ級強襲揚陸艦トリポリは257m)
26m(現行のアメリカ級強襲揚陸艦トリポリは32m)
起工
1964年06月15日:ミシシッピ州パスカグーラ、インガルス造船所
就役
1966年08月06日:フィラデルフィア海軍造船所
主な参加作戦
1967年~1973年:ベトナム戦争
1990年~1991年:砂漠の嵐作戦(湾岸戦争)
1992年:Operation Restore Hope(ソマリア内戦)
1994年:Operation Vigilant Warrior(イラク軍がクェート国境へ接近していた事に対応)
退役
1995年09月15日
解体作業開始
2018年07月:テキサス州ブラウンズビル、EMR International Shipbreaking Limited, LLC

主な参加作戦の年は、トリポリが参加した年を表す。

2023年に大阪湾に来たアメリカ級強襲揚陸艦アメリカはF-35を乗せてきたようですが、イオージマ級のトリポリはAV-8AハリアーやベルXV-15(V-22オスプレイの御先祖)を乗せたことがあるようです。

パンフレット

寸法など

米国での紙のサイズを調べると、1980年初めまで米国政府で使われた、8インチ×10.5インチ(203mm×267mm)の規格があったようです。多分その規格の紙を使っていると思います。

内容

画像及び文章の引用元はすべてUSS TRIPOLI LPH-10 パンフレット 1972年3月 U.S. Navy

表紙(1ページ目)

         USS TRIPOLI LPH-10

神戸の皆さん〞トリポリ〞号へようこそ
            1972年3月
 
     WELCOME HER FRIENDS FROM
           KOBE, JAPAN
            MARCH 1972

2-3ページ目

私艦長としまして皆さんの御来艦を心から
歓迎いたします.
CAPTAIN J.M.GAMMON, UNITED STATES NAVY
COMMANDING OFFICER, USS TRIPOLI (LPH-10)

As Commanding Officer of the USS TRIPOLI (LPH-10) I would like to extend to each of you a most cordial "WELCOME ABOARD". The USS TRIPOLI is qrateful for the opportunity to visit your beautiful city Kobe, Japan, and hope that your tour of the ship is as interesting and enjoyable as is our stay in your city. You are invited to tour the public areas of the ship. Your guides will be happy to answer any questions you may have as you go from one area to another. Again, "WELCOME ABOARD". I hope you have an interesting and informative tour of our ship.
我々〞トリポリ〞号は日本の美しい町神戸市を 訪問する機会を得て感謝すると共に. 皆様の 興味ある愉快な御来艦を喜んで居ます. 各公開区域において御質問が有れば喜んで 御案内いたします. 再度 よくいらっしゃいました. 皆様の興味有る有益な御来艦で有る様 祈って居ります.

ほとんどの米国政府の創作物は著作権フリーですが、パブリシティ権やプライバシー権の例外があります。米国国防総省もパブリシティとプライバシーの権利を放棄するものではないとあります。

これにより、GAMMON艦長の肖像写真画像を処理し、不鮮明にしておきました。この処置が艦長の名誉を損なう行為、礼を失する行為になっていなければいいが、と思っています。

4-5ページ目

USS TRIPOLI (LPH-10) receiving fuel and supplies at sea from another
United States ship.

航海中給油を受ける〞トリポリ〞号

A huge Marine CH-53 Sea Stallion helcopter approaches the flight deck of the amphibious assault ship USS TRIPOLI (LPH-10) during flight operations aboard the 183 meter long aircraft carrier. 飛行中の巨大なCH-53型補給ヘリコプター 183メーターの飛行甲板をもつ水陸両用 攻撃艦〞トリポリ〞号上にて

6-7ページ目

Combat Marines walk along the flight deck of the
USS TRIPOLI and board a CH-53 Sea Stallion
helicopter for transportation ashore as a landing
team during amphibious training operations.

上陸訓練中の〞トリポリ〞号甲板上を CH-53 型
ヘリコプターに乗り組む戦斗海兵隊

United States Marines board a CH-46 helicopter on the USS TRIPOLI (LPH-10) for transportation ashore during amphibious training exercises. 〞トリポリ〞号にてアメリカ海兵隊がCH-46 ヘリコプターに乗り上陸輸送訓練中

8-9ページ目

A United States Navy helicopter Offloads
supplies onto an aircraft elevator on the
USS TRIPOLI.

〞トリポリ〞号にて補給物資を航空機用
エレベーターに降ろす米海軍ヘリコプター

Flight deck crewmen finish refueling a CH-46 SeaStallion for a fast takeoff during amphibious training exercises. 訓練中のCHー46 型輸送ヘリコプターに 給油を終つた飛行甲板員

10-11ページ目

The USS TRIPOLI (LPH-10) undergoing fuel replenishment at sea
from a United States Navy supply ship.

米国補給艦より給油中のトリポリ〞号

THANK YOU FOR HAVING COME ABOARD THE USS TRIPOLI TO VISIT. WE HOPE YOU ENJOYED THE TOUR THROUGH THE SHIP AND HOPE TO SEE YOU AGAIN WHEN WE RETURN TO JAPAN. 〞トリポリ〞号へ御来艦有難う御座居ました 楽しい御来艦で有りました様に 又再度 日本で皆様にお目に掛れます様 望みます.

12ページ目

上に書かれているのは船内でもらったサインです。

サイン

一般公開で観に行った当時の記憶は2つしか残っていません。後のテレビ映像や書籍などの記憶が混入している可能性も十分あり得ますが。

エレベーターというのはもちろん、艦載機などを運ぶため甲板と格納庫とをつなぐ大きなやつです。

通路に船員さんが2名か3名というのは、左右と上に人がいた記憶があるのです。上というのがよくわからないのですが。

その船員さんの一人にサインを求めた、ような気がします。最後のページにあるものです。

なんてお読みすればいいのでしょうか? 真ん中は「K」で、次は「G」かな?

お元気でいてくださればと思います。

ホッチキスの針

ホッチキス(ATOKにも『商標名』だと指摘されましたがこのまま使います)の針ですが、錆びていません。表紙には針の錆でできたように見える2カ所の丸いシミが有りますが、針と位置が違うほか間隔も少し違うので、他の原因で付いたシミだろうと思います。

ステンレスかなと思い磁石を近づけると、弱いながらも吸い寄せられます。ステンレスでも磁性をもつものはありますが、これはどうなんだろう? と思って手持ちのNo.10-1Mステンレスで試すとしっかり吸い付きました。磁石では材質はわからなかったということで。

針の大きさですが、日本で普通に使われている先ほどのNo.10より一回り大きめです。

No.10の寸法は上辺の内寸(針肩幅というみたい)が8.4mm。パンフレットに使われているものはだいたい11.5mmくらい。たぶんNo.35というのと同じではないかと思います。

活字?

前から気になっていたのですが、日本語のところは活字でしょうか。

写真と英字を先に印刷して(オフセット印刷?)、その後活版印刷で日本語を刷った感じがするというか。英字と日本語の文字でにじみやかすれ、ベースライン(?)の角度等が違っているのでそんなことを思ったのです。よくわからないので適当なこと書いてますが。

後書き

この記事を書き出した20日に大阪湾に来た強襲揚陸艦「アメリカ」は、記事公開日の23日に出港するとかの話が。佐世保に帰るのかなと思ったら広島に行くとかの話も。大型船入航予定情報 - 明石海峡航路にはのっていないので一旦太平洋に出るんでしょうか。観に行きたかったな。

しかし半世紀前に参加したイベントのネタを書くとは……。歳を食ったものです。

文書更新履歴

2023年02月28日
英文にlang属性を追加。
2023年02月23日
このページを初公開。