はじめに

HTMLとCSSで印刷用のデータを作り、ウェブブラウザと両面印刷機能付きのプリンタを使って、冊子を作りました。

ここでは、そのときに使ったフォントの解説をします。

印刷や画像加工時には、安心して使えるよう、商用でも問題なく自由に使えるフォントを使うようにしています。法的な知恵知識皆無の私が選んだ一番無難な選択という感じでしょうか。

それらのライセンスと具体的なフォントの種類を書いてみます。

フォントのライセンス

WindowsやMacなどには、最初からある程度のフォントがインストールされています。それらのOSをインストールしているPCのモニタで表示する分には問題は無いと思います。たぶん。

それらのフォントを、PDFファイルなどフォントの埋め込みで使ったり、印刷に使う場合――特に不特定多数に配布したり商用で使う場合、問題が生じる可能性があります。Macは問題なさそうな気がしますがどうなんでしょう。とりあえずその辺のことはフォントのライセンスがどうなっているかを調べる必要があります。

ところがライセンス文がどこにあるのか判らなかったり、内容がよくわからなかったりして、何が良くて何がダメなのかはっきりしない場合があります。メーカーに聞くしかないというものもありますが、少々面倒なのは確か。

印刷物を配布せず、私的利用の範囲なら問題は無いと思いますが、イマイチよくわからない状態で使うのも釈然としないものがあるので、自由且つ無償で使えるフォントをダウンロードし、インストールして使うことにしています。

ライセンスの種類

先に書いておくと、この辺の書き込みは(というかサイト全体がそうなんですが)完全に無保証です。根本的なところで勘違いしている可能性もあるんで、使う場合は使う人自身がよく調べるようにしてください。

SIL Open Font license(OFL、SIL OFL)

ライセンスのFAQやライセンスの日本語訳があります。

Question: 1.1には、印刷目的の使用で問題が無いどころかvery welcomeと書かれてますね。

禁止されているのはフォントファイル自体の販売ですが、これも条件次第で行えるようで。

SILにメールで聞いた方の話もあります。まるで問題なさそうです。

GNU General Public Licence(GPL、GNU GPL)

GNUプロジェクトのライセンスで、フリーソフトウェアによく使われています。

ライセンスの質問への答えやライセンスの日本語訳があります。IPAによる日本語訳(法的チェックを行ったもの)もあります。いずれも現行のGNU GPLバージョン3です。

たとえばPDF文書でGPLのフォントを埋め込んだ場合、その文書自体が自動的にGPLの対象になる可能性があります……というかそうなるみたい。その結果、GPLを引き継いだPDF文書には、誰でも共有や改変、再配布ができる自由が受け継がれてしまいます。これを自分だけでこっそり持っているのはライセンス違反になりかねません(という解釈でいいのでしょうか詳しい方)。こうなってしまうことをGPL感染とかGPL汚染とか言うらしいですがそれはさておき。

これにはフォントに適用できる特別な例外があり、ライセンスに例外を示す文章を併記することで、そのフォントを使った文書がGPLの範囲外になります。

印刷の場合はPDF文書への埋め込みとは違うので、元々当てはまらないような気もしますが、例外を示す文章があるフォントなら安心していろいろ使えそうです。もちろん、PDF文書でフォントの埋め込みを使う場合は、この例外が明記されていることを確認する必要があります。

独自ライセンス

IPAフォント

IPAフォントにはIPAフォントライセンスv1.0があり、フォントのダウンロードページに記載されています。FAQもあります。

印刷は、IPAフォントライセンスv1.0の第2条の2項と3項に書かれています。全く問題なさそうです。

M+ FONTS

M+ FONTSは公式ページ内にLICENSEが書かれています。簡潔でわかりやすいです。

花園フォント

花園フォントは独自ライセンスとSIL OFLの二つを採用。利用者の都合で選べるみたいです。独自ライセンスの方はM+ FONTSを参考にしているとあり、簡潔でわかりやすいです。

他の既存のライセンス

他にもクリエイティブ・コモンズ・ライセンスApache 2.0ライセンスで公開しているフォントもあります。私は使っていないので、これらについてはパスしておきます。

今回使用しているフォント

CSSで指定しているフォントは以下の通りです。印刷目的では本文用としてセリフ書体(明朝体)が適しているので、できるだけセリフ書体のフォントを選んでいます。

遊びの要素が入ったいわゆる「デザインフォント」や、筆記体などは選んでいません。汎用性の高そうなのを選んだつもりです。

使っても問題なさそうなフォントを選んでみましたが、とりあえずお約束としてこれも無保証ですよと書いておきます。

見本の画像は印刷プレビューのスクリーンショットです。画面だと薄めだったり、印刷すると若干雰囲気が変わったりするので、参考程度に。印刷物の撮影は難しく判りにくいので止めました。

本文、見出し他

IPAフォント、IPAexフォントを指定しています。

IPAex明朝
本文に使用
IPAexゴシック
見出し(h1を除く)、dt要素、figure要素や表の説明、th要素、strong要素、em要素、kbd要素の入れ子、コンピュータのパスに使用
IPA明朝
pre要素に使用

公式サイト
IPAexフォント/IPAフォント
ダウンロード
IPAexフォントのダウンロード
IPAフォントのダウンロード
ライセンス
IPAフォントライセンスv1.0で公開 各ダウンロードページに記載、同意後にダウンロード

IPAexfont00201.zip、IPAMTTC00303.zip、IPAGTTC00303.zipをダウンロードしました。解凍してできる全てのフォントをインストールしました。

等幅英数字

Inconsolataフォントを指定しています。

Inconsolata
a要素、samp要素、code要素、kbd要素、URLやメールアドレスなど等幅英数字指定の文字に使用

公式サイト
Inconsolata
ダウンロード
公式ページの「OpenType file」をクリック
ライセンス
SIL Open Font license(OFL)で公開。公式サイトではIt will be released under the new Open Font License of SIL.と記載。Google Fonts InconsolataではSIL Open Font License, 1.1と明記。

Inconsolata.otfをダウンロード、インストールしました。

数式(mathML)

科学・技術系の数式用に作られたSTIXフォントを指定しています。

STIX MathJax Main
mathML専用で使用

公式サイト
STIX Fonts Project Website
ダウンロード
The STIX Fonts Project - Browse /Current Release at SourceForge.net
ライセンス
STIX Fonts - User License:SIL Open Font license(OFL)で公開。

STIXv1.1.1-latex.zipをダウンロードしました。解凍してできたフォルダの「Fonts\fonts\opentype\public\stix\」にotf形式のフォントが5つ。とりあえず全部インストールしました。

ラテン文字系を使う言語

Times Roman、Times New Romanの代替となるフリーフォント、Linux Libertineフォントを指定しています。

Linux Libertine
学名指定の文字に使用
Linux Libertine Display
  • 英語指定の文字
  • ロシア語指定の文字
  • ギリシャ語指定の文字
  • スペイン語指定の文字
  • ポルトガル語指定の文字
  • ドイツ語指定の文字
  • イタリア語指定の文字
  • スペイン語指定の文字
  • ラテン語指定の文字
  • ベトナム語指定の文字

公式サイト
LinuxLibertine.org | Public domain Fonts: Biolinum and Libertine
ダウンロード
LinuxLibertine.org - Browse /linuxlibertine at SourceForge.net
ライセンス
Files & License - Libertine Open Fonts Projekt:GPLとOFLで公開。GPLフォント例外についても記載されています。

5.3.0のLinLibertineTTF_5.3.0_2012_07_02.tgzをダウンロードしました。複数あるうち、LinLibertine_RIah.ttfとLinLibertine_DRah.ttfをインストールしました。LinLibertine_RIah.ttfがLinux Libertine Italic、LinLibertine_DRah.ttfがLinux Libertine Displayです。

他にもLinBiolinum_Kah.ttfは面白そうです。

LibreOfficeをインストールしている場合、Linux Libertine G フォント(セリフ系)と Linux Biolinum G フォント(サンセリフ系)が一緒にインストールされていると思います。印刷にはそれを指定すれば、フォントをダウンロードしてインストールする手間も省けます。フォントファミリー名は「Linux Libertine G」「Linux Biolinum G」で。

中国語の漢字

膨大な量の文字を収め、自由に使える明朝体のフォント、花園フォント(花園明朝)を指定しています。

簡体字ではIPAex明朝にない文字があり、ブラウザで表示したときは一部をシステムのフォント(Simsun)で表示していました。その文字だけ他と違った感じになってしまう他、Simsunフォントのライセンスも考える必要が出てきます。そのため、花園フォントを指定してみました。

花園明朝A
  • 簡体字指定の文字に使用
  • 繁体字指定の文字に使用

公式サイト
Hanazono fonts
ダウンロード
ダウンロードファイル一覧 - 花園フォント - SourceForge.JP
ライセンス
Hanazono fontsのライセンス参照:独自ライセンス及びSIL Open Font license(OFL)で公開。どちらかを利用。

hanazono-20131208.zipをダウンロードしました。花園明朝A、花園明朝Bとありますが、二つともインストールしました。

ゴシック体なら、Source Han SansのSourceHanSansCN、Google Noto FontsのNotoSansHansが使えると思います。もしくは全部入りのSourceHanSansOTF-1.000.zip

朝鮮語

明朝体(セリフ書体)のハングル・朝鮮漢字フォントを収録している、UnBatangを指定しています。

UnBatang
朝鮮語指定の文字に使用

公式サイト
KLDP.net:환영합니다.: Un Fonts: Project Info
ダウンロード
KLDP.net:환영합니다.: Un Fonts: Release New File Version
ライセンス
KLDP.net:환영합니다.: Un Fonts: Project Info及びフォントファイルのプロパティ参照:GPLで公開。GPLフォント例外についても記載され、商用、非商用目的に使用することに問題が無いと書かれているみたい。Google翻訳にかけただけですが。

UnBatang_0613.ttfをダウンロードしました。

ゴシック体なら、Source Han SansのSourceHanSansKR、Google Noto FontsのNotoSansKRが使えると思います。

ヒンディー語

インドの公用語ヒンディー語を表すデーバナーガリー文字のUnicodeフォント、アンナプルナSILフォントを指定しています。

フォントの入手は、インド系文字の外国語・多言語フリーフォント関連まとめを参考にしました。

Annapurna SIL
ヒンディー語指定の文字に使用

公式サイト
Annapurna SIL Fonts
ダウンロード
Annapurna SIL Fonts Downloads
ライセンス
License:SIL Open Font license(OFL)で公開。

AnnapurnaSIL-1.100.zipをダウンロードしました。その中のAnnapurnaSIL-R.ttfをインストールしました。

他に太いのがあります。また、同じサイトの下の方にネパール語用のフォントがあります。

タイ語

いくつかあるうち、フォントファイルの見本で英数字がセリフ書体だった、Norasiを指定しています。

フォントの入手は、ヒンディー語と同じくインド系文字の外国語・多言語フリーフォント関連まとめを参考にしました。フォントを選ぶ際は、タイ語デザインフォントを読む方法も参考にしました。

Norasi
タイ語指定の文字に使用

公式サイト
Fonts-TLWG | LTN -- linux.thai.net
ダウンロード
ftp://linux.thai.net/pub/thailinux/software/thai-ttf/ の一覧
ライセンス
Fonts-TLWG | LTN -- linux.thai.netのLicenseには「フリーライセンスで利用可能なフォントを収集」とありますが、フォントのプロパティでライセンスを確認した方が良さそう。

thai-ttf-0.4.17.tar.gzをダウンロードしました。その中のNorasi.ttfをインストールしました。

他に太いのと、斜体が2種類(italicとoblique)ありますね。他のフォントでは等幅フォントもありました(TlwgMono.ttf)。

ライセンスの詳細は以下の通りでした。

This font is free software; you can redistribute it and/or modify it under the terms of the GNU General Public License as published by the Free Software Foundation; either version 2 of the License, or (at your option) any later version. This font is distributed in the hope that it will be useful. but WITHOUT ANY WARRANTY; without even the implied warranty of MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. See the GNU General Public License for more details. You should have received a copy of the GNU General Public License along with this font; if not, write to the Free Software Foundation, Inc. 51 Franklin St. Fifth Floor, Boston. MA 02110-1301 USA As a special exception, if you create a document which uses this font, and embed this font or unaltered portions of this font into the document, this font does not by itself cause the resulting document to be covered by the GNU General Public License. This exception does not however invalidate any other reasons why the document might be covered by the GNU General Public License. If you modify this font, you may extend this exception to your version of the font, but you are not obligated to do so. If you do not wish to do so, delete this exception statement from your version.

Norasi.ttfのプロパティ、ライセンスの説明より

Ctrl+Cでのコピーが出来ないので、文章見ながら写しました。カンマとピリオドとかいろいろ間違っているかもしれない……。

とりあえずライセンスはGPLバージョン2以降であること、As a special exception,~から始まる文章により、ライセンス例外を明記しているのを確認。

アラビア語

Amiri
アラビア語指定の文字に使用

公式サイト
مشروع الخط الأميري :: Amiri Font Project
ダウンロード
Amiri - Browse Files at SourceForge.net
ライセンス
Licenseには Open Font Licenseで配布とあります。

amiri-0.107.zipをダウンロードしました。その中のamiri-regular.ttfをインストールしました。

記号系

Symbola
記号系の文字に使用

公式サイト
In lieu of a licence
ダウンロード
公式ページからダウンロード
ライセンス
公式ページの最後に書かれています。任意の使用のために無料(自由?)で提供。組み込みや変更、再配布もできる。

Symbola.zipをダウンロードしました。Symbola.ttfをインストールしました。

フォントファイルのライセンスの項目には、Fonts in 'Unicode Fonts for Ancient Scripts' are offered free for any use.とあります。

他のフォント

字をびっしり詰めて書く場合、株式会社 武蔵システム2/3角フォントが使えるかもしれません。ライセンスはIPAフォントライセンスv1.0です。

同じサイトでIPAフォントを元に作った半角フォントや左右反転の鏡文字明朝、鏡文字ゴシック、使用制限のない毛筆フォントなどがあります。

MS明朝やメイリオ

マイクロソフト社のWindowsについているフォント、MS明朝やMSゴシック、メイリオについては、以下のサイトの内容がよく引き合いに出されるように思います。私もここで知りました。

記事の中に「マイクロソフト ソフトウェア ライセンス条項」へのリンクがありました。リンク先のはWindows7のUltimate版だったので、ライセンス条項のページから私が使っているWindows7 Professional日本語版を読んでみました。SP1とかの区別はないようです。

また、マイクロソフト ソフトウェア ライセンス条項を読むから、自分のPCにインストールされているライセンス文書(rtf形式)も読んでみました。こちらはWINDOWS 7 PROFESSIONAL SERVICE PACK 1と最初に明記されています。

肝心のフォントについては両方とも項目3.bに書いていることのみで、商用や営利目的での場合は書かれてないように読めます。どうもよくわからない。

IPAフォントや花園フォント、Linux Libertineフォントなどはライセンスを明記しており、そのライセンス自体も公開されています。FAQを公開し、そこで印刷や商用利用について書いているところもありました。使える使えないがはっきりわかるものを選ぶ方が私としては安心できます。

ということで私は、MS明朝やMSゴシック、メイリオについては、上記サイトの方などが問い合わせたりして結果を公開してくださっているにもかかわらず、印刷目的にはできるだけ使わないようにしています。一度確認をミスって配布物にメイリオを使って印刷したことがありましたが……。

印刷用フォントの置き場所

ダウンロードしたフォントですが、システムにインストールする方法と、webfont.CSSで指定したフォルダに置く方法があります。

webfont.CSSで指定したフォルダに置く

デフォルトでは、webfont.CSSなどがあるCSSフォルダ下のfontフォルダを指定しています。そこにフォントを置いてフォントファミリー名やファイル名を指定すれば、Webフォントと同じ要領で反映されるようになります。

システムにインストールする手間もなく、標準のフォントフォルダが肥大することもありません。

システムにインストールする

システムのフォントフォルダにインストールするのが普通の使い方かなと思います。MacやLinux関連は判らないのですが、いわゆる標準のやり方というやつです。

Windowsの場合だとフォントフォルダの肥大化により起動時間が増加するとか言われてます。

システムにインストールすれば、どのソフトウェアからも使えるという利点もあります。ものによっては使えないのもあると思いますが。

フォントを一時インストールする

私が以前使ってたのがこの方法でした。フォント管理ツールを使って、一時的にフォントをインストールします。

グラフィックツールなどで一時的に大量のフォントが必要とかいった場合は有効だと思います。

今回のようにHTML+CSSでブラウザを使う場合、Webフォントという手法が使えたので、この方法は一旦置いておきます。

フォントの一時インストール

ダウンロードしたフォントはインストールすることで使えるようになりますが、あまりインストールしたくない場合があります。

  • PCの起動時間に影響するので、インストールするフォントは最小限にしたい
  • ソフトウェアごとに使いたいフォントを管理したい

フォントを一時的にインストールする機能を持つソフトがあります。設定しておくと、そのソフトを起動している間だけ設定済みのフォントが使えるようになるというもの。ソフトを終了するとフォントもアンインストールされます。

PCの起動時に読み込まれることはないので、起動時間などに影響を与えることもありません。起動するソフトに応じて使うフォントを選択することもできます。

Macだと標準で用意されているFont Bookというフォント管理ツールがあるようです。

Windowsだとフリーや商用のツールがあります。私はフォントインストーラー SAKURAの一時インストール機能を使っています。フォントファミリー名を知りたいときにも役に立ちました。

他にも「フォント管理ツール」でググるといろいろ出てきます。NexusFontというのがよく取り上げられているようです。